映画「すずめの戸締り」の感想(小説版も読んだのでその感想も含む)。※ ネタバレあり
いい意味で想像と全然違った。
新海誠監督の作品は「天気の子」以外は大体見ているから、自分の中で「新海誠監督の作品はこんな感じ」という感覚があるのだけれど、「すずめの戸締り」はその感覚に全然当てはまらない作品だった。
まるで少年漫画のようだった。
すずめちゃんめちゃくちゃ根性あるし、旅の中で成長するし、会う人みんなすずめちゃんを助けてくれるし完全に友情・努力・勝利だった。
下記インタビューでも「君の名は。」とは違うテイストの物語であるということがわかる。
【インタビュー】新海誠監督がエンタメ映画に込めた覚悟 「すずめの戸締まり」で辿り着いた境地 : 映画ニュース - 映画.com
事前にPVを見ていなかったので草太さんが椅子になって一緒に旅する展開は衝撃だった(PVには走る椅子のシーンがある)。
ロン毛のイケメンが出ることは知っていたから「え?イケメンの出番ここで終わり!?ここから椅子と旅するの!?」てなった。
確かに女子高生が大学生と二人旅する話だと絵面がちょっとアレな感じになりそう。そういう意味では草太さんが椅子になることで、すずめちゃんと草太さんの二人旅が自然に受け入れられる形になったと思う。
すずめちゃんは「戸締り」の旅路でさまざまな困難に遭うのだが、一瞬立ち止まることはあっても引き返すことはなかった。進む先が正解か分からなくとも前に進むことを選んでいた。
すずめちゃんが前に進むことができた理由の一つに、旅で出会った人たちがすずめちゃんを助けてくれたこと、があると思う。
出会った人々を次々に味方につける━━━。完全にモンキー・D・ルフィじゃん。(やはり少年漫画だ・・・)
そしてすずめちゃんは助けられるだけでなく、出会った人々を助けてもいた。え?芹澤さん?男が細かいことを気にするな。
最初にすずめちゃんは旅の中で成長したと書いたが、最初から人格は完成しているような気がする。環さん、あなたは立派に母親やっていましたよ・・・・・・。
さて、映画を観た後に小説も読んだ。
小説は基本的には映画の内容をそのまま文章化したもので、小説限定のエピソードがあるわけではない。すずめちゃんを中心とした登場人物の心情が地の文で記されてたり、細かい説明が文章で記されているくらいだと思う(もちろん映画で充分心情描写はされている)。
ただ、小説を読むことで映画で見逃してしまっていたこと・本筋とは関係ないが少し疑問に思ったこと等を補完できた。
例えば、映画を観たときはダイジンの名前の由来がよく分からなかった。「大臣に似ている」というのが由来だったが、「どこが大臣に似ているのだろう」と思っていた。どうやら髭が大臣っぽいらしいが、正解がわかっても正直全然腑に落ちないぞ・・・
あとは、東京の後ろ戸が皇居下にあったことや草太さんのおじいちゃんの右腕がないことも小説を読んで初めて気づいた。
「高校生すずめが子供すずめに渡した椅子がどこから来たのか」も小説を読んで知ることができた。映画を観ただけでは気づかなかったが、もしかしたら気づくような描写になっているかもしれない。余裕があったらまた映画館に行くのも悪くない。余裕がなかったら数年後の金曜ロードショーで見返すことにしよう。
芹澤さんの心情を知ることができたのも良かった。客観的に見ると芹澤さんはこの旅でガソリンと車のフロントドアと屋根と2万円を失った(そして親友を取り戻した)のだが、芹澤さんはそんなことは全然気にしていない感じだったのが良かった(もちろん、映画だけでもそんなことは自明だけれど)。あんないい男なかなかいないと思う。草太さんはすずめちゃんにあげるので芹澤さんを私にください!
月並みな感想になるが、観に行って良かった。まさか小説まで買うとは思わなかった。
映画を何回も見直すのは時間的にも金銭的にも厳しいところがあるが、小説ならそのような制約なく、何回も見返すことができる。
逆に言うと何回でも見返したいと思った作品だった。
ただ小説では音楽的な要素を振り返ることができない。
主題歌・挿入歌・BGM、そしてそれらのかかるタイミング、どれも素晴らしかった。流石にこればっかりは実際に映画館で、映像で体験しないと忘れてしまう。
やはりもう一回くらい映画館に寄るのもいいかもしれない・・・。